「惹」の研究 第一回

東京は、今日からいよいよ秋か? と思うような朝を迎えています。

 

子どもたちは夏休み明けですね。今日は土曜日でよかった。月曜になっても休みたかったら休んでいいんだよ!

 

というわけで、特につながりはありませんが、筆者がコロナ休みに書いていた、中国のネットスラングについての論文(的なやつ)を連載させていただくことにします。今日は「序」の部分です。

 

オペラ歌手

     「惹」の研究

――中国のネット用語『惹』はいかに流布したか――                                      髙﨑 由理

 

序

 

 テーマ自由選択のレポートにおいて難しさを感じるテーマは、筆者の場合、テレビドラマや流行語に関するテーマである。難しさの共通点は、ネット上の情報が豊富すぎることや、どのドラマのどのシーン、どの語彙のどの用法についても、各人の好悪の情を含む捉え方が異なるため、混乱したり思い込みに走ったりしがちなことである。

 

 活路は、とにかくよく観察し、公平に事例・用例を集めて説得力ある論を展開することにあろう。それができるならば、各人各様の論が成立して構わないはずである。

 

 さて、2020年1月、ふと「惹」という中国のネットスラングに興味を惹かれて調べはじめたところ、2018年末に発生した新用法は、中華人民共和国、湖南衛星放送の声楽オーディション番組から発生したということを知ったが、たまたま、それは筆者がYouTubeで楽しんでいる番組であった。

 

 そこで、テーマを「中国のネット用語『惹』はいかに流布したか」と設定し、この語の生成・変化の過程をたどる試みを思い立った。

 

 仮説は三つある。まず、すでにネット上に「淋語」としての「惹」があったことを、先行研究に基き確認する。特に、一語文の用法が可能とされていたことに注目するであろう。

 

 二つ目に、新たな「惹」の内容はもと非常に限定された場面、すなわち『声入人心』というテレビシリーズにおいて成立したことを述べる。その時点は、2018年11月から12月と推定する。

 

 三つ目に示したいことは、中国のオタク系ネット民がすでに成熟を遂げており、2020年初頭までには「萌え」の一種としての「惹」(褒意)が出現、流布していることである。

 

 研究手法について一言述べる。中華人民共和国のサイトをネットサーフィンしていると、容易に意図せぬ商業サイトへ誘い込まれ、甚だ煩わしい。一方、北京政府の監視の目も気になる。それゆえ、本研究のために中華人民共和国のサイトに登録をしない。外側から観察できることのみ観察し、報告する。その範囲でSNS を含めネットを観察した結果は注に盛り込んだ。

 

 また、テレビ番組および周辺情報の観察にはYouTubeを主に使用する。日本から確実に見られる動画投稿サイトだからである。ただし、「弾幕」に関する記述はbilibili動画の観察に基づく。なお、中国のネット空間や芸能界の特殊事情について、現時点の状況を記録することにも歴史的意義があると考え、注として記した。

 

第一回以上、第二回に続く。