カエルって不気味?

中国において「青蛙神」は多様な効能を備えた福の神でした。
カエルの神様、青蛙神は嫦娥とも混同されますが、月に蟾蜍が居るという伝承については、例えば橘英範が中国における月と水と蟾蜍の関係を整理しています。
それによると、月は死と再生の象徴であることから、冬眠する蟾蜍が月と繋がりを持ち、そして蟾蜍が水と関わる動物であったため冬眠する動物の中から蟾蜍が月の象徴とされたのだそうです。
月に蟾蜍が居たという『楚辞』天問や『論衡』説日等の記述、蟾蜍と水の関りを示す雨乞い用の太鼓や漏刻にある蟾蜍の飾り、詩や小説がその例として挙げられています。
月に住む蝦蟇
月に住む蝦蟇も、カエルのもつ繁殖力や水の生き物という属性に向けられる期待から神聖視され、神化されたと考えられます。
以前に挙げたように、日本ではカエルは神話性が低いとは言っても、蛙を神、または田の神の使者とする俗信、更に蝦蟇(ヒキガエル)を福の神、家の守り神とする俗信は日本にも存在します。
しかし、日本における蝦蟇(ヒキガエル)のイメージは不吉や凶事に関わるものが強く、蝦蟇は怪異と共に語られることが多い生き物でもあります。
例えば、『日本古典博物事典 動物篇』では、「蝦蟇」の章に「怪異」の項目があります。そこには『今昔物語集』を始めお伽噺『蛙の草紙』、江戸の随筆『北窓瑣談』『甲子夜話』『耳袋』『街談録』等、不気味なカエルのお話が挙げられています。
どうして日本ではカエルが不気味で不吉な生き物になってしまったのか?
篠田知和基は、当初豊穣の神であった蛙が次第に不吉な存在とされていくことを「蛙の悪霊化」と言っています。
篠田はヨーロッパの例を挙げ、初期キリスト教が性的なもの、豊穣なるものを排除しようとした結果「蛙の悪霊化」が起こったと指摘しています。
篠田は日本でも「蛙の悪霊化」が起こったとしています。
日本では身近な存在であり生殖の象徴として最初は蛙が重要な役割を果たしていたが、猿、狐、馬などが重要な役をするようになると、蛙信仰は衰退して日本では古代の蛙神が近世で蝦蟇妖怪になった。
「ガマの妖術使いもの」から不気味キャラへ
そして、このような「蛙の悪霊化」には「ガマの妖術使いもの」の流行が一役買っていたそう。
ここから見ると、日本でカエルが不気味になったのはやはり、近世以降、さまざまなメディアによって広まったフィクションの影響が強いようですね?
主な参考文献
橘英範「液体の月光―中国古典詩における月光表現管見―」『中國中世文學研究』 中国中世文学研究会 編 (44), 20-44, 2003-07。
小林祥次郎 『日本古典博物事典 動物篇』、勉誠社、2009年。
篠田知和基『世界動物神話』、八坂書房、2008年。