道教と忍者⑩

忍者ブームの変遷と忍術イロイロ②

         

フィクションの忍者のみならず、忍者や忍術と言われてイメージされるのは
大きく分けて2通りでしょう。1つは呪術的な忍術を駆使する超常的存在とし
ての忍者、もう1つは史実的に描かれる忍者です。
フィクションにおいて忍者は小説・漫画・映画・演劇等様々なジャンルに登
場しますが、往々にして前者のイメージを持つ忍者は「荒唐無稽」「子供向け
」として評価されず、一方で後者のイメージを持つ忍者ものは「重厚なテーマ
」「大人の鑑賞に耐え得る」等の評価を受けます。これは従来の忍者・忍術研
究において史実的な戦闘者という忍者像に対する考察が重視されることで、呪
術的(宗教的)な超常的存在としての忍者のイメージが軽視、排除されてきた
からでしょう。また、文学研究という面においても忍者・忍術に対しては、戦
闘者としての忍者の内面、精神性に「納得」したり、この戦闘者という性質に
、その時代ごとの読者の共鳴が呼び込めるという点に注目が置かれるため、後
者のイメージは高く評価されるのに対して、このような評価基準に外れる前者
のイメージは、それの持ち込まれる媒体が子供向けの映画や少年漫画といった
ものが多かったというのも相まって評価や考察の対象とされてこなかったので
す。
忍者ものは現在に至るまで、小説や演劇において一つのジャンルを築いてお
り、幾度かの「忍者ブーム」と呼ばれるブームに対する分析も行なわれていま
す。まず、「忍者ブーム」とは何かということですが、マス・メディアと絡め
たいくつかの考察があります。
例えば、尾崎秀樹は『大衆文学論』の中で、この「忍者ブーム」についてマ
ス・メディアと絡めて「だいたい忍術ブームは、マス・メディアの更新期に起
こる傾向がある。カブキ演出に新しい展開の見られた文化・文政期に一つのメ
ルクマールがあり、大正期を中心とする昭和にかけての一時期に、立川文庫か
ら大衆文学への忍術小説・映画の興隆があった。」と考察しています。現在言
われる「忍者ブーム」とは主に大正~昭和にかけてのものであるようです。忍
者ブームも、忍者イメージの変遷にメディアの変化が関係しているのと同様に
、メディアの文字から映像への変化と共に出現しているのです。
 また、忍者とマス・メディアとの関連性については、「忍者ブーム」はメ
ディアの擬態であるという高山宏の考察もあります。

 

中島慧
主な参考文献
尾崎秀樹『大衆文学論』講談社、2001年。
高山宏「メディアの中の忍者学 六方手裏剣に仮託されたマニエリスム時代の
トリックスター」『忍者と忍術―闇に潜んだ異能者の虚と実』歴史群像シリー
ズ71、学研、2003年、158~165p。